「切迫している?首都圏の地震」
講師 : 東京大学地震研究所教授 佐藤比呂志氏(昭和49年卒) 平成18(2006)年5月13日(土) 「アルカディア市ヶ谷」
マグニチュード8の濃尾地震ではなんと!6mの断層ができた。房総〜東京〜東海は最も地震を起こす確率の高い断層に近い。これはプレート境界の真上であること、もともと海だったところが陸地になったのが東京だから、言わば我々は地震の巣の上に住んでいると言って良い。三陸や西日本では沖合いで地震が発生する。三陸や西日本の海岸線に沿ってその沖合いにプレート境界があるからだ(澤藤注:日本周辺のプレートの状況は日本損害保険協会のホームページに詳しい)。日本での近年の大きな地震を列挙してみると
太平洋プレートの上にフィリプンプレートが沈み込み、この間で地震が起きるのと、プレートが歪んでその上で大地震が起きる。関東ではおよそ100年周期で大地震が発生、M8クラスはおよそ200年周期だから、M7クラスは数十年以内に起きると予想されているが、関東大震災クラスは近々には起きないと思われる。より詳細に言えば三浦半島の下に断層があり、JAMSTEC※の真下が一番すべると予想される。「30年発生確率」で言えば、宮城県沖が99%、南関東が70%である。東海地震が懸念されているが、東海と限るわけではなく、四国から南関東にかけての地帯で大地震が起きる。静岡県が危ないというのは確かに言える。それではいつ起きそうか?これはわからない。地震観測網は日本と台湾が世界の中でダントツの整備状況にあるが、それでも予知は今の技術では難しいとしか言えない。 ※JAMSTEC:独立行政法人海洋研究開発機構で深海探査などで有名。しんかい6500、うらしま、かいこう7000などニュースによく出てくる。海洋地震の研究は北海道十勝沖と四国の室戸岬沖で行っている。ここでは「横須賀本部」を指し、金沢八景の八景島シーパラダイスに程近い、日産追浜工場の隣である。 震度だけではなく、周期が大問題である。ガタガタと揺れる短い周期、ゆ〜らゆらと揺れる長い周期、建物の構造によって周期による耐震強弱が異なる。低層の建物は短周期に弱い。ガタガタ→ガシャンと壊れる。高層ビルは短周期の揺れは吸収するが、長周期だと場合によって共鳴していつまでも揺れたり、増幅される場合がある。地表近くに泥が溜まっていたりするといつまでも揺れる。北海道や三陸沖で地震が起きた場合、震源地から遠い関東平野の震度が結構高くしかも長く揺れつづけるのは、関東平野が「すり鉢プリン」のようなものだからである。最も危険なのは江東、墨田といった地帯である。 さて我々が対策できることは何か?震災対策グッズの準備とか、水の貯め置きとか、いろいろある。高層マンションでは長周期の揺れによりドアが開かなくなったり、エレベータに閉じ込められる、水が来なくてトイレが使えないなどということが起きる。また活断層の真上にある高層の建物は危ない。活断層の分布は公開されているから調べられる。また宅地造成前の土地利用状況も調べて、畑地を選ぶこと、水田はダメ。傾斜地の場合は切り土してより低いところに盛り土するという宅地造成が行われるので、盛り土部分は買わないこと。地震では盛り土部分が崩れる。必ず切り土部分を買うこと。ただしこれも切り土して後ろに崖ある場合、崖崩れが起きるかもしれない、いずれよく調べること。もっとも既に購入済みの人は手遅れかもしれない(苦笑)。 |